二人の女
              むらい はくどう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 数日前のことだ。女から「元気?」とライン・メールが入っていた。女はマミと言う。先方からメールが来るなんて珍しい。去年、四十路を前に結婚した。出逢ってからの年月の経過を考えると、昔と言っていいくらい前から関わっている。肉体関係が切れて数年が経っている。
 毎年秋にマミの誕生日が来る。その時に祝いのメールを送る。最近は生存確認のためにメールしているようなものだ。去年の春のことだ。何か予感めいたものがあったので、誕生月の半年前にメールを入れてみた。すると、話があるから夜に電話を掛け直してほしいと言われた。後で電話すると、結婚するということだった。結婚生活がどんなものなのか、続けられるかどうかわからないけど、取り敢えず、一度試しに経験してみると言う。以前から家族を持ちたいという願望があった。その願いが叶ったことになる。
 そして、去年の秋になり、マミの誕生日を迎えた。当日に、結婚を祝福するメールを送った。すると、「ドレス姿を見てやってください」とウェディング姿の画像を送ってきた。
 私とマミは趣味趣向が真逆と言っていい。仲が良くなるにつれてすれ違いが多くなった。それでも、若い肌の魅力には勝てなかった。女の肉体に溺れ、快楽の虜になっていた。性交回数は人生で一番多いかもしれない。小柄で幼顔で三十路を過ぎる頃でも瑞々しさがあった。化粧をすると美形に見えた。今ではマミと交わらなくなって久しい。
 親子ほどの年齢差がある。いろいろとあったが、連絡は途切れていない。親友のように定期的に連絡を取り合う訳でもない。今ではどんな風に生きようとしているのか傍観しているだけだ。遥か以前に同じ時間や空間を共有したというだけで、今は昔の想いになりつつある。忘れた頃にメールが来たり、送ったりしているだけだ。どちらかに深刻な事態が発生しても、特に連絡を取り合っていないから、アドバイスなどできないだろう。大体は事後報告になる。
 性の関係がなくなってからも、最低限の付き合いを保っている。過去に深いスキンシップがあったが、既に肌感覚は忘れている。同性だったら、こんな風な関係が続かないと思う。希薄になったままの関係を持続しているのは、マミの方が情に厚いからだろう。
 今は辛うじて連絡がついている程度のことだ。今更、情交を復活させようとする意欲はない。連絡がつかなくなっても、特に支障がない。冷たい男と思われたくないから、現状を維持している。
 関係が深かった頃はいろんな所に同伴した。その当時、一緒にいるマミはいつもイラついていた。不満を露わにするということは、私にベストな対応を欲していたことにもなる。そして、早くから見限られていた。ずっと前から二人の相性が悪いことを認識していたのだ。
 高校生の頃からマミには彼氏がいた。二人の親が公認する仲で、将来の結婚を約束していた。その彼氏と別れたのは私の存在が関連しているかもしれない。ある時、私と外国旅行に行く計画がばれた。マミと彼氏に修羅場はあった。マミの彼氏から私の携帯電話に連絡を入れてきた。今後は逢わないとマミの彼氏に約束させられた。その後、マミと彼氏との仲は修復したかに見えた。マミの彼氏から電話があってから、半年近くブランクがあったが、ほとぼりがさめた頃合いをみて関係が復活した。もしかして、密通の痕跡が見つかったのかもしれない。それだけでなく、他にも何か訳があったのかもしれない。そして、マミの彼氏の方から別居を告げられ、出て行った。